行政書士は食えるのか?
行政書士を目指している方は色んなところでこの議論がされているのを見かけると思います。
そして、不安になってしまう事がよくあります。
私もそうでした(笑)
ただ、この議論自体、不毛な争いでしかないと断言できます。
その理由についてはまた別の機会として、今回は「行政書士って仕事があるのかな?」という疑問について経験則でお話してみようと思います。
行政書士の業務
業務内容については広範にわたるので詳細に説明する事は避けますが、「行政書士ってなにをするの?」という問いに対しては、一言でいえば、「行政関連の許認可などの書類作成や申請代行」になります。
この行政関連の書類が非常に多岐に渡り、普通の方は、いや、行政書士自身もその全容は把握できていないのではと思います。
その為、ある程度の年数を重ねてきた行政書士は自然と得意分野に偏っていき、専門性特化していくことが多いのです。もちろん、初めから専門分野ありきの方もいます。
業務難易度は?
同世代の友人に開業したことを知らせると、祝ってくれる事が多いですが、それと同じくらいに「仕事ある?」という疑問をぶつけられる事。これは嫌味でもなんでもなく、単純な疑問な場合がほとんどなのですが、そもそも開業したばかりの小僧に答えられるはずありません(笑)
そんな訳で、そういう質問には答えられない代わりに、どんな事をするのかを知っている範囲で説明したりする訳です。すると、だいたい2つの種類の返答に分かれます。
難しいんじゃない?
一つは「難しそう」と素直と感想。
特に、事務関連に関わった経験のない方に多い気がします。
手引きに目を通して書類を作成する、これがもう無理と感じるらしいです。
わざわざ依頼する人いる?
先の感想と違って、こちらからすると少々、とげのある意見に感じるのがこの類。
悪意のあるなしはわかりませんが、事務系の仕事をしている方や、行政書士の業務に多少の知識のある方に多いです。
この人達は場合によって自社の業務で自分でも申請した事が有ったりするので、「自分にもできたし…」という感覚が先に来るようです。
総合的にみると個々の難易度はそれほどでもない
どちらの回答に対しても共通するのは、業務の難易度についての理解です。
前者は「難しい」と判断しているのに対し後者は「出来ない事はない」という判断です。
では、実際に私の感覚がどうかと言えば、「個々の難易度はそれほど難しいものではない」です。
もちろん、ピンキリです。
簡単な物もあれば、パニックになるくらいにわからない物もあります。
ただ、難しい案件は難しいなりの重大な内容についての申請だからなのであって、そうなると、高難度の申請が必要になる絶対数自体が少ないのです。
なので、押しなべて総合的に判断すると、「それほど難しい訳ではない」となるのです。
依頼者はいるのか?
「申請内容がそれほど難しくないのであれば、依頼する人も少ないのでは?」こう考える方もいます。
実際、ネットが普及した今の時代であれば、ほとんどの情報が個人で調べられますので、行政書士に依頼しなければならない訳ではありません。
私も、「わざわざお金を払って依頼しなくても、自分で出来るのでは…?」当初はそう考えていました。
ですが、実際に受託するようになってその考えは変わりました。
車のタイヤ交換、自分でする派?業者に依頼する派?
この見出しでピンとくる方もいるでしょう(笑)
車のタイヤ交換、簡単ですよね?
それでも雪が降ればガソリンスタンドはタイヤ交換の順番待ちが絶えません。
つまりはそういうことです。
タイヤ交換を業者に依頼する方は、女性の場合は力仕事が苦手だったり、機械自体に苦手意識が有ったりと自分でするのに自信がないという理由が多いようですが、これは先ほどの事務系に関わった事がなく「難しそう」という感想を持つ方と通じる部分がありますよね。
また、タイヤ交換は出来るけど、自分でやるのは面倒くさい、又は時間がかかるから、なんて方もいます。これは先ほどの「多少の知識があって、自分で出来る方」に該当しますが、自分で出来るにしても、コストに対して依頼するメリットを見出せば依頼する、という考えの方です。
そして、自分でタイヤ交換する方は、費用を払ってまで依頼することにメリットを感じない方。これは先の回答でもそのまま、自分で調べて何とかしようとします。
重要なのは相手がメリットを感じるかどうか
タイヤ交換の例でもお分かりいただけると思いますが、要するに、費用対効果でメリットを感じるかどうかが問題になります。これは報酬の高低の話ではなく、相手がそれに対して対価を払う価値を見出しているかどうか、と言う話です。
生業としているということ
もう一つ、行政書士は申請業務を生業としているので、当然、その経験数が一般の方よりも多いです。
例えば、建設業の許可は、建設業の経理をしている方は時間をかければ何とかなります。それこそわからない事があれば、直接、役所に問い合わせをすれば教えてくれますし、申請した後でも不備があれば訂正をするように連絡があったり、どのように修正すれば良いのか教えてくれたりします。
それに対して建設業許可を専門にしている行政書士に依頼すれば、必要な書類を準備すれば、後は基本的に待っていればよいのです。色んな業者の色んな状況に対応した経験があるので、対応力が全然違います。
仮に、初めての建設業許可を自社の事務員に任せるとして、労働時間を8時間/日、その半分の4時間を申請書作成等に充てるならば、もおそらく、申請までに1~2ヶ月かかると思います。時給1000円で月の稼働が20日だった場合、金額換算で8万~16万の計算です。
それに対して、行政書士に依頼すれば、かかっても1カ月程度で、費用も相場でいえば10万~15万くらいです。
金額はさほど変わらないにしても、許可取得までの期間は大幅に短縮できますし、何より、自社事務員の4時間分を利益創出の為に回す事が出来ますので、費用以上の利益を見込める事になります。
まとめ
ここまで説明したように、行政書士の仕事は、やろうと思えば自分で出来る範囲の物が多いです。
けれど、それをお金をかけて依頼する人は必ずいるのです。
特に少数精鋭で事業を展開している中小企業の方は、多少の費用を節約するより、自社の従業員を利益獲得に向けて働かせたいと考えている場合が多いです。
ですので、「行政書士になっても仕事があるかわからない」と不安になる必要はありません。
食えるか食えないかの議論ではないですが、需要自体は間違いなくあるのは実体験からも確実です。
問題はその見込み客にどうやって接近していくかで、それは需要の有無とは別問題になります。
という訳で、資格取得に向けて勉強されている方は、食っていけるかどうか、仕事があるかどうか、を考えて不安になるよりも「需要はある!」と言うことだけを念頭に頑張って頂ければと思います。
ではまた!
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