前回は国内において消費税が間接税である必要性について考えてみました。
では海外との関係性についてはどうなっているのでしょうか?
今回は消費税の海外との関係性について考えてみたいと思います。
消費税の計算式
まずは消費税の計算方法について確認しておきます。
基本的には次に示す通りで、計算自体は簡単なものです。
消費税計算
売上げ税額-仕入れ税額=納付消費税額
この売上げ税額と仕入れ税額に8%と10%がある事から、実際に計算する場合は別々に計算した後に合算することになりますが、今回は面倒なので一律10%で考えることにします。
また、消費税の実態は国税部分と地方税部分があり、その合算で10%なり8%となっていますが、これも10%で統一します。
それでは次に売上げ税額の計算を確認してみます。
売上げ税額の計算
計算方式には原則と特例がありますが、今回は原則の計算のみ確認していきます。
売上げ税額の計算 原則(割戻し計算)
税込み売上げ額×100/110×10/100
説明すると、税込み売上げ額に100/110をかけて税抜売上げ額を算出して、それに10/100、つまり10%をかけて売上げ税額を導き出します。
仕入れ税額の計算
では次に仕入れ税額の計算を確認します。
仕入れ税額の計算 原則(割戻し計算)
税込み仕入れ額×100/110×10/100
説明するまでもないですが、単純に「税込み売上げ額」を「税込み仕入れ額」に置き換えて計算するだけです。
輸入の場合の消費税
消費税の計算を確認したうえで、輸入の場合の消費税がどうなるか考えてみます。
輸入
海外から購入 ⇒ 国内で販売
この場合は先ほどの計算式の通りでの計算になります。
と言うのも、輸入時には国内の仕入れと同じく原則として消費税がかかる為です。
輸出の場合の消費税
では輸入の場合はどうでしょうか?
これは国外への販売になりますので、原則として消費税は掛かりません。
つまり、先ほどの計算式に当てはめると次のようになります。税込み価格を110円として計算してみます。
輸出時の消費税計算
売上げ税額 110×0/110×10/100 = 0
仕入れ税額 110×100/110×10/100 = 10
売上げ税額:0 - 仕入れ税額:10 = -10
消費税額がマイナスになってしまいました。
このマイナス部分を国が補填の為に還付しているのが、いわゆる消費税輸出還付金です。
輸出還付金の闇?
巷ではこの輸出還付金は消費税の闇として話される事が多い事はご存じでしょうか?
消費税還付金自体は国内でも条件を満たせば申請できるので、輸出だけが特別ではないようにも思えます。
ただし、実際に闇かどうかは別として、国内の場合と明確に違う部分があります。
それは、売上税の計算が0になっている点です。
確かに、輸出する時は本来消費者が負担する消費税額を上乗せした請求ができません。
ですので、実際に売上げ税額は0になります。
しかし、ここで財務省の定義を思い出してみましょう。(第一回 国税庁と財務省の見解 参照)
「…消費税相当額は、コストとして販売価格に織り込まれ…最終的には消費者が負担することが予定されている」
となっています。
これは国内で売上げが思うようにいかずに売上げ税額のマイナスになった場合や、設備投資等で一時的に経費が増価して売上げ税額がマイナスになった際には当てはめることが可能ですが、輸出の場合には当てはまりません。
なぜなら計算式で売上げ税額の掛け率が10%ではなく、0%となっているからです。
「消費税相当額はコストとして織り込まれ」と言うことは、輸出製品にもコストとして消費税額を含ませるべきであり、掛け率0はおかしいのです。消費税額としての記載が出来ないとしても、原価として価格に反映させるべき金額になります。
謎理論…
もう少し具体的ににてみましょう。
Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ、国内、輸入、輸出で200円の売上げがあったと仮定します。
仕入れにかかる金額は税込み110円とします。
Aさんの場合
売上げは200円なので、売上げ税額は20円です。
仕入れ時に仕入れ税額10円が発生していますので、10円を納付します。
仕入れに100円かかっているので、利益は100円となります。
Bさんの場合
売上げは200円で、輸入品にも消費税がかかりますので、Aさん同様、10円を納付し、利益は100円です。
Cさんの場合
売上げは200円ですが、消費税率は0なので、売上げ税額は0です。
仕入れ時に仕入れ税額を支払っているので、差額はマイナス10円となり、還付を受けます。
この時、Cさんの利益は200円から税込み仕入れ110円を引いて、さらに10円の還付を受けて100円となります。
お気づきだろうか…?
Aさん、Bさん、Cさんはそれぞれ100円の利益がでています。
ですが、販売価格に視点を移すと、次のようになります。
Aさん 販売価格税込み 220円
Bさん 販売価格税込み 220円
Cさん 販売価格 200円
そうです。輸出のCさんは販売価格で20円安く販売しても同じ利益を得る事ができるのです。
これは税抜価格として販売する為、といえばそうなりますが、「消費税相当額はコストとして織り込まれ」となるとどうでしょう。税抜価格だとしても、消費税相当額をコストとして原価に含める事が可能です。
仮に、Cさんが販売価格に税額をコストとして織り込んだとします。
販売価格:220円 利益:120円
この図式が成り立つ訳です。
実際に輸出の際の値決めに「消費税額を除く必要がある」と法的な規制はありません。
これが、輸出還付金が闇と言われる所以なのでしょう。
まとめ
輸出還付金は個人事業でも輸出して条件を満たしていれば申請できますので、金額の多い大企業を悪者にする必要はないと思いますが、それでも数億円の還付を受けているのは何とも言えない、複雑な気分になりますね。
そして、これは「消費者が負担する予定とされている」間接税であるからこそ出来る事で、これも消費税を直接税にしたくない理由の一つとして言われている事です。
真偽についてはまた後日として、今回は輸出還付金は、還付の理由として正当性があるか疑わしい。と言うにとどめて終わりにしたいと思います。
ではまた!
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