その2の回で相続の流れについて説明しましたので、今回は相続財産の調査について掘り下げてみたいと思います。
相続財産調査で行う事
正直なところ、相続財産の調査には明確な手順と言うのがありません。
というのも、遺産に該当するもの全てをピックアップする作業ですので、現金やタンス預金、もしかしたらへそくりなんかもあるかも知れませんし、比較的若い年代の方であれば、仮想通貨取引や、ネットでの副業的な収入を得ている可能性もあったりします。ですので、本当に細かく調査しようと思ったら大変な労力が必要になります。
この部分は専門家に依頼したとしても、やることは基本同じです。負荷が大幅に軽減されることはないので、もし依頼しようと考えておられる場合は、その事は了承しておいてください。
その上で、ここでは基本的には確認しなければならない事を上げていきます。
不動産名義の確認
住居が持ち家の場合は、家屋と土地の名義人を確認します。
この時、共有名義の場合はその持分が相続財産となります。
また、すでに亡くなられている方の名義だった場合は、手続きが複雑化する可能性があります。
借家の場合は賃貸借契約書などで契約者名義を確認しておきましょう。亡くなられた方の名義の場合、貸主へ名義変更の相談をする必要があります。県住や市住などは名義変更できず退去しなければならない可能性もありますので、該当する場合は必ず相談するようにしてください。
預金口座の確認
対外的な部分ではまず預金口座の確認をしてみましょう。
口座凍結の前に通帳記帳を済ませていた場合は、通帳を確認することになります。
相続財産としての預金残高の確認や、口座振替で定期的に引き落とされているものがあるか等を確認していきます。
引き落としされているのが、公共料金であれば、すでに名義変更や解約を済ませている段階だと思いますが、そうでない場合は、詳細を確認していく必要があります。
単発での支払いなのか、長期借入金なのか、通帳に記載されている内容を基に調査し、場合によって各所に確認を取っていくことになります。
もしも通帳の記帳を忘れていた場合、凍結された口座の通帳記帳は出来ませんので、その金融機関に相談してみてください。
郵便物の確認
請求書や引き落とし明細、振替通知など、郵送されている書類がないかをチェックします。
請求書や振込用紙が見つかった場合、それも負債としての遺産になりますので、破棄はもちろん、この段階では建て替えの支払いもしないようにしてください。
支払期限が過ぎていたり、直近に迫っている場合でも同様です。
例外的に、ご自身が保証人になっている場合であれば、支払っても構いませんが、支払期限を超過して延滞料が高額になっているような事態でなければ、ひと段落するまで保留しておくのがよいと思います。
私物の確認
これはご家族の方でも抵抗があると思いますが、割り切って臨みましょう…。
特にスマホやパソコンは要注意です。
サブスクリプションサービス、所謂、サブスクと呼ばれる毎月定額を支払って継続使用するサービスがスマホやパソコンには多く存在しています。これを放置していると思わぬタイミングで請求がくる可能性も。
これらの機器の操作に苦手意識がある場合は、他の家族やその相続でお世話になっている士業の方に相談してみるとよいでしょう。
その他、書斎をお持ちの方であれば、その机の引き出しや、金庫があれば金庫内の確認など、思いつくところを手あたり次第に確認していきます。
特に、借用書などの重要な書類は見落しがないように注意してください。
また、指輪やネックレスなどのアクセサリーや、骨とう品、絵画や着物など、値打ちのありそうな物品は相続財産になる可能性がありますので、その辺りも意識しておくとよいと思います。
財産調査で重要な事
くどいようですが、負債に関する情報には見落しがないよう、念入りに確認してください。
その負債の合計がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄する事ができます。
相続を放棄すれば、それらの負債は一切支払う必要がありません。
しかし、現在のお住まいが被相続人名義の場合、安易に放棄してしまうと住居を追われることにもなりかねません。
ですので、負債とのバランスをよく考えて対処する必要があります。
もしも、多額の借金があり相続放棄したいが、住居や土地が相続人名義で放棄する訳にもいかないなどの困った状況になってしまった場合、弁護士に相談してください。
また、いくら負債があったとしても放棄しなければならないという義務はありませんので、身内の負債はきっちりと始末をつけたい、と考える場合は、負債を含めて相続するのは問題ありません。
状況に合わせて適切な判断を
以上、基本的に確認するべき内容を説明しました。
他にも、亡くなられた方によって財産状況はそれこそ千差万別です。
冷静に確認し、困ったときは専門の方に相談しながら適切な判断ができるように心がけてください。
今回はあえて触れていませんが、調査をする中で、不動産の名義人が祖父や曾祖父であったり等、亡くなられた方より以前の名義人のままであったりする場合、手続きが複雑化していきます。
この相続の事を、数次相続と呼びますが、相続人調査にも大きな影響を与えます。
余裕があれば相続人調査の時、又は別枠で取り上げようとおもい、今回はここで触れるにとどめておきます。
次回は相続人調査について説明していきます。
ではまた!
コメント