相続手続き解説 その4

前回は相続財産の調査について解説しましたが、それに劣らず重要になるのが相続人の確定であり、相続人を確定させるために行うのが相続人調査です。今回はその相続人調査について説明していきます。

目次

法定相続人

原則として、相続人は法律で決められています。
その決められた相続人を確定していく作業が相続人調査となる訳ですが、具体的な作業の話の前に、まずは法定相続人の基本部分について確認しておきます。
法定相続人は階層的に分かれていて、第一から第三順位まであります。

配偶者

配偶者は順位には含まれておらず、配偶者がいる場合は常に最優先の相続権を持つことになります。
実子との法定相続分の割合も1/2とその半分を占めることになります。
ですので、基本的には、「配偶者+(順位の相続人)」という構図になり、法定相続分は順位が下がるにつれ配偶者の割合が増えていきます。

第一順位の相続人

相続人を決める際に一番優先されるのが第一順位の相続人です。
対象は被相続人の子供です。(養子も含まれます)
配偶者はいるけど子供はいない、子供はいるけど配偶者はいない、配偶者はいるけど、子供には先立たれてしまっている、など、状況は人それぞれですが、代襲相続を含め誰かひとりでも第一順位の相続人がいるのであれば、第二順位以降の相続人に相続権は発生しません。
また、少々細かい話になりますが、認知されていない子供には相続権はありませんが、遺言状で認知の意思表示をされている場合は認知の子供と同等の扱いとなります。
(代襲相談についてはまた改めて説明しますので、今回は割愛します。)

第二順位の相続人

第一順位の相続人が一人もいない場合、又は第一順位の相続人全員が相続放棄した場合は相続権が第二順位の相続人に移行します。
第二順位の相続人は直系尊属と呼ばれますが、簡単に言えば、被相続人の両親が該当します。
この時、両親と言うのは、直系尊属、つまり血縁関係にある父母の事になります。
ですので、嫁入り、婿入りどちらの場合でも実の父母の事になり、嫁ぎ先の両親は本人にとっては婚族にあたり、相続人には含まれません。ただし例外として、養子縁組の場合は血縁関係はなくとも相続人となりえます。
(婿入り、嫁入りどちらの場合も単純に嫁いだだけの関係では養子縁組には該当しません)
父母が何ら原因で不在の場合、相続権は祖父母に移行します。

第三順位の相続人

第一順位、第二順位の相続人に該当者がいない場合、相続権は被相続人の兄弟姉妹へ移行します。
被相続人の兄弟姉妹が既に亡くなられていて、その子(被相続人からみて甥や姪)がいる場合は、その子に代襲相続が発生します。

相続人調査

以上、第三順位までが相続人の範囲となり、第三順位までの相続人がいない場合は相続人不在ということになります。(相続人不在の場合はまた別な手続きになっていきますが、今回は関係ないので省きます。)
相続人調査とは、先ほどの順位ごとの相続人を確定していく作業です。
次に具体的な方法をみていきます。

被相続人の出生から死亡までの戸籍

まず初めに、被相続人の出生から死亡までの戸籍を入手します。
基本的には死亡時の戸籍から遡っていくことになります。
この時、除籍謄本、改製原戸籍謄本という聞きなれない言葉が出てくると思いますが、それらも含めて「出生から死亡までの戸籍」になります。
役所によっては遡る事の出来る範囲でまとめて準備してくれることもありますので、一度、役所に問い合わせしてみるのが良いと思います。
その役所で全て揃わない場合は、生前、県外に戸籍があったことになりますので、該当する県に戸籍請求をすることになります。遠方で窓口に行くのが難しい場合は多少時間はかかりますが、郵送で請求することも可能です。

戸籍から相続人を確定していく

被相続人の出生から死亡までの戸籍を入手し終わったら、その戸籍を基に相続人を調べていきます。
問題ない場合は、現在の配偶者やその子だけとなりますので、特に手間はかからないのですが、仮に、認知した隠し子がいた場合は、その子も相続人になりますし、被相続人が再婚相手で、元の配偶者との間に子があれば、その子も相続人になります。
全く面識のない相手に相続の話で連絡するのは気苦労が大きいですし、仮にその子が結婚して子供もいるが、本人は既に亡くなっているような状況になっていたならば、さらに話が複雑化していきます。もしこのような状態になっているのであれば、弁護士への相談をお勧めします。

相続人である証拠書類

被相続人の戸籍を遡り、無事に相続人を確定することができたならば、次は、その相続人が相続人である事を証明しなければなりません。
その証拠書類として必要になるのが、各相続人の戸籍謄本です。
子供が未成年で被相続人の戸籍に入ったままなら被相続人の戸籍で証明できますが、そうでない場合は、それぞれの戸籍謄本を持って被相続人との関係を証明することになります。
この証拠書類は、以降の相続手続きの際に各機関に提出することになるのですが、基本的には原本の提出が必要であり、提出したら返却されません。ですので、不動産登記や口座の引継ぎなど、複数の機関に提出が予定されている場合は、必ず、返却申請をしておきましょう。忘れてしまった場合は、また戸籍謄本を取り直すことになり、手間も費用も無駄に費やすことになります。
別枠で説明しますが、「法定相続情報証明制度」というのがあり、「法定相続情報一覧図」というものを法務局が無料で作成してくれます。法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本の束を持ち歩く必要もないだけでなく、この書類であれば、コピーでも認めてくれる機関もあるので、とても便利です。

まとめ

今回は相続人調査について説明しましたので、流れと必要書類を簡単にまとめておきます。

相続人調査
 ① 相続人の確定
    被相続人の出生から死亡までの戸籍を入手し、そこから調査をしていく。
 ② 相続人の証拠書類を入手
    相続人と被相続人の関係性を証明する為、各相続人の戸籍謄本を集める。
 ③ 必要に応じて、各機関への手続き書類として使用
    場合によっては法定相続情報一覧図を作成すると便利。

以上、文章だと単純ですが、これも大きな労力を費やすことになると思います。その書類がなぜ必要なのかを把握しておくと、必要書類として暗記するよりも多少、楽になると思いますので、その一助となれば幸いです。

次回は遺産分割協議についてお話しようと思います。

ではまた!

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